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神の二択を持つ男
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- じゃあ、よく話してた兄ケンの話いってみようか
- ウメハラ
- うん、兄ケンもインパクトあったね。もうけっこう前の話なんだよなぁ。ちょうど麻雀にハマリ始めた時期で、俺は殆どゲーセンに行ってなかったからブランクがあったのは事実だと思う。そもそも事の起こりは大阪のエックスの人達(※1)が遠征にやってきたんだってとこから始まるんだ
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- 大阪のエックスって廃れずにずっと盛り上がってるもんねぇ
- ウメハラ
- そう、そんでまー、そのころの格ゲーって安定とか効率、知識と技術に依存する部分が大きくて、その部分だけでの対戦になりがちだったんだよ。で、そんな風潮に俺もどっぷり浸かってた。そんな時期にあの男はやってきたんだ
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- 神の二択を持つ男か!w
- ウメハラ
- そう。兄ケンはもちろん知識も技術もあるんだけど…「対戦はそんな楽なもんじゃないよ」ってことを思い出させてくれた人というか…
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- あの二択を徹底したプレイスタイルはかっこいいよな
- ウメハラ
- うん。っていうか、まぁ…、徹底したスタイルの人は他にもいると思うんだけど、そういう人ってやっぱり限界があるというか…、オレは今までそういうスタイルで本当に強い人間を見たことがなかったから、兄ケンはインパクトがあったね。それも徹底した二択だしw
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- ちなみに他の要素のレベルも高いんでしょ?
- ウメハラ
- まぁ基本的なことは当然全部できるよ、それがないと徹底のしようがないからね。インパクトの種類としてはアレックスのときと似てるね。力技でどうこうするタイプ
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- へー、んで初対決はクチャクチャにされたとw

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(※1/大阪のエックスの人達)
長瀬のUFOの常連達。
初対決はクチャクチャ
- ウメハラ
- そうだねえ…、時期が時期ってのもあったけど、けっこうやられたよ。けど回数やってくうちに勝つようにもなった。んで最終的にはけっこう勝ったと思うけど
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- へー、どうやって攻略したの?
- ウメハラ
- ま、普通に準備ができたというか。こっちはリュウでキャラ性能で勝ってるからケンの土俵で勝負するのはないなと。最初に戦ったときって真っ向から力勝負に応じてたんだ。東京ではそれまで多少不利を感じても勝てたからね
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- よーするに相手に付き合わなくしたってことね
- ウメハラ
- うん。そしたら少しづつだけど経験の差というか…、甘い部分が見え始めてきて勝てるようになったって感じかな。今やったらわかんないけどね。でもまぁ経験なんていつかは並ぶもんだからねぇ。その差で勝てるのはそう長くないよね。精神力が強いってのは普遍的なものだから、兄ケンは強いよ。長い目でみたら
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- しかし二択で勝ち続けるってできるもんなんだね
- ウメハラ
- まぁ、あのときは兄ケンさんの強い時期だったね。誰でもあると思うんだ。流行りというか…、全盛期みたいな凄く強い時期が。俺が会ったときはその時期だったみたいだよ。あの後少し勝率とかが下がったって聞いたから
ウメハラの全盛期
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- へー、んじゃウメハラの全盛期って自分でいつだと思う?
- ウメハラ
- 勢いがあって1番勝ってたのはハンターのときだろうね。単純に1番強いのは今じゃんって気がするけど。周りとの差をつけたって意味ではやっぱハンターだね
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- なるほど。噂には聞くがやっぱそうなのか。話は戻って兄ケンのような人間力って、ゲーム以外でも発揮できそうだからいいよね、そういう強さって
- ウメハラ
- そうだね、俺もそういう強さが好きというか…、そういう人間を強いと思うからね
三重県からの刺客
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- ウメの対戦観を語る上でクラハシさんははずせないでしょ。出会いとかどんな感じだったの?
- ウメハラ
- ミエケンかぁ…、確かにヤツとはたぶん1番多く対戦してるだろうからね。出会いはあんまりインパクトはなかったけど、そうだな…、ミエケンは最初「ハドウケン」って呼ばれてたんだよ
ムーミン谷に悪魔
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- 波動拳ってことだよね?
- ウメハラ
- そう。当時の秋葉での身内対戦って玉(飛び道具)とかナシの地上での足メインのスタイルだったんだよ。でまぁ…、玉はどちらかというと嫌われる傾向にあった。そんな平和なムーミン谷に悪魔がやってきたって感じだったねw
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- 充分面白そうだぞ!その出会い
- ウメハラ
- んでまぁ、俺は初めて対戦するまでけっこう時間があったんだよね、ミエケンとは。けど対戦した仲間の話では「波動拳しか打たないウザイ奴」って感じで疎まれてたんだ。そんな中、最初に対戦したのはどこかの大会にガイルで出たときだったね。当時の俺はガイルでリュウ相手にぜんぜん負けなかったんだけど、その大会でミエケンのリュウに負けて「おっ?」って感じだったね。んで、そのあと秋葉に来なくなったからミエケンと会う機会はなくなったんだ。…しばらくして、みんな強くなって自信がついた頃に「面倒臭かったミエケンも倒しとくか!」って感じでハーフに会いに行ってから話すようにもなったかな
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- 出会いは敵同士ってのはけっこうあるよね、この世界
- ウメハラ
- ミエケンの場合、重要なのは出会いよりもその後だ
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- 波動拳の影響を受けたのもその頃?
- ウメハラ
- 波動拳の影響となると複雑になってくるんだよね。オゴウさんとかリキヤさん(※2)も絡んでくるから
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- それについては後ほど詳しく聞くとしよう。んで、クラハシさんとの対戦はどう影響したの?

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(※2/リキヤさん)
知る人ぞ知るエックスの超強豪プレイヤー。
調子の良い時、悪い時
- ウメハラ
- そうだね…、ミエケンとの対戦から学んだことは調子の良い時と悪い時のやることの違いというか…、対戦には強い時と弱い時がちゃんとあるんだ、ってことがわかったことかな
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- 対戦する中で生じる流れの変え方とかもクラハシさんとの対戦でわかったって前に言ってたよね?
- ウメハラ
- うん、そうだね。普通じゃダメなときはあるよ
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- 俺が印象的なのは、いつか柏木も含めて3人でZERO3の対戦をしてたときに、その日の調子が良かった柏木ナッシュに完封されて俺のガイが困ってたら横から「3回ぐらいやれば今の柏木を崩して見せるよ」って言って…、1試合目暴れ回って、2試合目も奇襲しまくって、3試合目は普通に立ち回って、あっさり柏木に勝って見せたってことあったじゃん?あのときに俺は自ら対戦の流れを作り出すことができるってのを知ったんだよね
- ウメハラ
- あれ? そんなことあったっけ?w でもまぁ、それはそういうことだろうね。「ガイ:ナッシュ」の組み合わせって、普通にやって煮詰めたら絶対勝てないからね。たぶんそのときの俺は最初の2試合でセオリーと逆の行動を取り続けて無理やり裏を表に見せたんだと思う。んで、3試合目には表だったはずの選択肢が裏になってて柏木は困ったと
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- そのときも同じようなこと言ってたねぇ。あれはかなりわかり易かった!ってか覚えとけよw
- ウメハラ
- 我ながらいい足跡を残すねぇ
ウメハラの師匠
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- 今まで色々な人と対戦したと思うけど、その中でも「特にインパクトがあった人って誰でどんな人だったのか?」って面白そうじゃない?
- ウメハラ
- あー、それはなんか話しやすそうだね。けど昔のエックスの時代には良い人いっぱいいたからなー
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- その中でも選りすぐりの人でよろしく!
- ウメハラ
- うーん…、そうだな。何人かいるけどインパクトって点ではオゴウさんかな
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- オゴウさん!俺も少しだけ聞いたことあるね。けどまぁ…、出会いから話してみてよ
- ウメハラ
- そうだねぇ…、出会いはビッキーズの大き目の大会のときだね。たまたま団体戦で組んだ人たちの中に1人、Xサガットなのにスゲー強い人がいてさ、俺も対戦してみたんだけど何にもできなくて…「すごい強い人達だったんだなー」って印象に残ってた。それっきりその人たちとは会う事はなかったけどね。んで、しばらくして俺がハンターの全盛でもう誰にも負けなくなってたときに新谷さんの地元に遊びに行ったんだ
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- 新谷さんって川崎のアナカリで有名な?
オーラをまとった男
- ウメハラ
- うん、そう。川崎まで行ってハンターとかずっとやってたんだ。そしたら…、これ冗談じゃなく、マジでオーラをまとった男が小汚い紙袋を持って「ドカッ!」と1人用のエックス筐体に座ったんだ。いやー、もう…、ほんっと釘付けで、その男を見てたんだ、ずっとw
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- 昔は雰囲気ある人多かったからなーw それで?
- ウメハラ
- んで、見てるとリュウを選んで「上手い奴がやるコンピューター戦」をやってるんだ。竜巻でゲージ溜めてスパコンキャンセル、みたいな。で、さらに驚いたのは立ち大Pからスパコンキャンセルしてんだ、その人。当時はできる人でも中足から、極めた人でしゃがみアッパーキャンセルでそれ以上はないと思ってたのに、いきなり有り得ないことやりだして…こいつはヤバイ!と
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- そうなんだよなぁ…、当時はネットがないから見た事ない大道芸にはスゲー感動したよね、確かにw
ウメハラ敗北
- ウメハラ
- で、新谷さんの知り合いの人に聞いてみたんだ「あの人誰ですか?」って。そしたら「あの人はピアの元常連の人ですごい強かった人だよ、話し掛けてみなよ」って言われて…、話し掛けなかったんだけどね、当然。でもなんか対戦することになっちゃっててw とりあえず恐そうだからさ、まいったなーって感じでいたらその人が不意に振り向いたんだ。ヒゲがモジャモジャでピアスして髪もなんかパンチっぽかったんだんだけど目を見たときに「あっ!あのときの人だ!」ってわかった。だから昔組んだビッキーズ大会の話をしたんだ。そしたら思い出してくれて、少し対戦もしたんだけど…、もう全然対戦してなかったみたいで、キャンセルとかうまかったけど対戦自体は弱くなってた。でもまぁ「最近ビッキーズにエックスが復活したんでよかったら来てください」みたいな事言ってそのときは別れたんだ。んで、1週間くらいして新谷さんと連絡取ったら「オゴウさんエックスやってるよー上手くなってるよー」って言われたから、また川崎まで行ったんだ。
…そこでボコられた
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- ボコられた?w
- ウメハラ
- ハンター全盛で…、エックスも超勝ってて…、秋葉でもほぼ負けない。敵は青パン(※3)だけかなって感じだったのに、川崎に行ったらなぜか白いパンツのサガットに「超」ボコられた。かなり色々やったんだけどダメで、そのときに持ってた固定観念みたいなものがぶっ壊されたんだ。例えば、波動拳はリスクはあるけど読まれなきゃいいとか…、当時は「飛び道具は危ないからなるべく打たないようにしよう」って考えてたからね。ちなみにオゴウさんのサガットってアホみたいに玉打つんだw けど俺が飛ぶと打ってなくて、歩いてきてしゃがみ中Pを1回「シュッ」って空振ってアパカなんだ、絶対

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(※3/青パン)
スーパーサガット。恐ろしく性能が高い。
俺が飛んだときだけ撃ってない
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- うおー、カッコイイなw エックスのサガットって弱キャラじゃなかったっけ?
- ウメハラ
- モリモリね。とりあえずオゴウさんを見るまでは戦えないキャラだと思ってたからね。ちなみにそのときの俺のキャラのガイル。「ガイル:サガット」かなりガイル有利な組み合わせなんだ
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- へぇーマジですげえな…
- ウメハラ
- まぁオゴウさんとの出会いはそんな感じなんだけど何にビックリしたかっていうと、その…、当時の俺は基本的に負けることがなかった…、どんな組み合わせでもどんなキャラが相手でも。なのに自分が有利な組み合わせで、なーんかいやっても勝てなかった。しかもなんで負けてんのかわかんないっていうんじゃないんだ。俺が飛んだときだけ撃ってない、明らかに力負けなんだw だからすごいインパクトだった。当時の常識として「上手い人は飛び道具は撃たない」ってのがあったのにアホみたいに打撃ってんだもん。最初は「調子に乗ってんなー」って感じだったんだけど、いつまでたっても落とされるんだ、これが。んで超ボコられてから初見だけかと思って、ミエケンたちとサガット戦やりまくって3~4ヶ月後にもう1度挑んでみた。けど全然負けた。それがオゴウさんだね。まぁその頃に対戦観が大きく変わった、っていうかそれ
まで「読みはどこまでいっても読みなんだから最終的には対応の待ちだろ」っていう思考だったのが「あのオゴウさんのような玉は俺も打ってみたい!」って思うようになったんだ、んで今に至る
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- なんかそんなすごい人なら俺も会ってみたいなぁ
- ウメハラ
- そうだねぇ、当時のインパクトは本当に凄かったよ、オゴウさん
地上最強の男
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- よく言われる地上戦ってあるじゃん。それについてなんか凄い人とかっていなかったの?
- ウメハラ
- 地上戦っていうか…、足払い戦が超強い人なら知ってるよ
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- へぇー、誰?リキヤさんとか?
- ウメハラ
- カメラ屋さんっていう人なんだけど、一応エックス全盛期に足払い戦は最強って言われてたらしいよ
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- カメラ屋さんかぁ…、俺は名前だけだな聞いた事あるな。「感謝で昇竜拳」(※4)の人でしょ?
- ウメハラ
- そう。俺の知る限りでもあの人が最強だね、足だけは目茶苦茶強かったよ。あの人に会ってスト2の楽しさを知ったってのがあるからね、俺は
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- ほう、そんな大事なことを。詳しく聞きたいねぇ
- ウメハラ
- そうだな…、どっから話していこうかな。とりあえず秋葉時代でハンターが稼動して1年くらい経って、平井モンとももう会ったくらいかな。当時の秋葉ではハンターとエックスが流行ってて、一応エックスの方もちょこちょこやってたんだよね。適当にバイソンとか使って遊んでた。そしたら常連みたいな人達と知り合って、集まって対戦するようになったんだけど、俺バイソンだったからあんま負けなかったんだ。
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- バイソンは強いらしいからなぁ…、でもあんま負けなかったって、その時からすでに強かったのかw

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(※4/感謝で昇竜拳)
カメラ屋さんが発行していた対戦同人誌。
情報文化が未発達だった時代に最先端の対戦観がネタ要素満載で語られたバイブル
ウメリュウ誕生
- ウメハラ
- んでバイソンを使ってたんだけどそこの常連の人に「ウメちゃんリュウとかも使ってみたら?」みたいなこと言われて、リュウ使ったら面白かったんだ。んで、少ししたらリュウでも勝ちはじめた。そしたら同じ人が「ウメちゃん波動拳打つのやめてみない?」って言ってきたんだ
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- それってなんかさぁ…w まぁいいけど
- ウメハラ
- いや、波動うんぬんって言うにはちゃんと理由があるんだよ。リュウというキャラは地上戦が大事だから「あんまり意識してない地上戦を練習してみれば?」ってことだったんだ。飛び道具を撃つなとは言わないけど「もう少し打つのやめてみない?」って感じで。「それじゃあ…」ってことで足払い戦が好きな人に教えてもらいながら地上での動きを練習するようになった。そこからまたある程度勝てるようになったときに現れたんだ。あの人がw
足の達人!
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- 足の達人か!
- ウメハラ
- 一応「誰なんですか…、あの人?」って感じで聞いてみるとみんな口々に「昔スト2やってた人の中で足払い戦は1番強い」って言うんだ。スト2ってさ、足払い戦が強い人は沢山いたっていうイメージがあったから…、その中で1番強い人ってのは興味あるじゃん。で当時足払い戦やりまくってた俺は「へぇー」って感じで対戦してみたんだ。したらボコリン
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- ボコリンw どれくらい酷かったの?1試合に大足が一発当たるか当たらないか、とかそんなもん?
- ウメハラ
- まぁ…、そういうレベルだね。大足は当たって1発。2発当てれたら「よっしゃー」って感じだったね。んで、よく言うけど当時は…、仮に「秋葉ルール」としよう、そういう暗黙のルールみたいなものがあった。その中では「ガイルのソニックは撃っていこう!リュウケンの波動はあんまうっちゃ駄目だけどガイルは撃っていこう!」みたいな考え方があったんだ
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- 超ローカルルールってやつだね。でもまぁ当時多かったよね、そういうの。そのルールの中だと足払いは超重要になるよね
本当に勝てない
- ウメハラ
- 一応そのルールの基になってる思想って「昔に忠実であれ」ってことなんだよね。だからガイルのソニックは昔から撃つものだけどソバットとかは邪道、みたいな。でさ、俺はちゃんとルール守ってやってた訳なんだけど、リュウケンでカメラ屋さんに本当に勝てなかったんだ、波動ナシだと。そこで無理しないでガイルとか使ってみたんだ、一応使えたからね。そしたらガイルでなら結構勝負になったんだ。だからカメラ屋さんとやる時はいつもガイルを使うようになった。んでガイルって秋葉では制限なく動けたから「これ楽しいな」ってことでガイル使いになっていったんだよね。ガイルってさ…、すごくスト2の面白さが詰まってるキャラだと思うんだ。だからスト2が本当に強くなるきっかけになったのはガイルを使うようになったからだと自分では思ってる。で、ガイル使うきっかけはカメラ屋さんじゃん? 結構大きいんだよ、あの人の存在は。まぁ…、それからしばらくしてまたリュウ使いに戻ってくんだけどね
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- なるほどねぇ…、んじゃカメラ屋さんって凄く強かったんじゃないの足以外も?
- ウメハラ
- いやー、そこが面白いもんで、あの人は足以外はダメなんだ。エックスで小足連打とかもあんまできなかったからねw でも逆にその偏りがあったからとも思うんだよね、あの足は
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- 足の達人はあくまで足だけかぁ…、なんか色んな意味でスゲエなw
地上戦

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- んじゃ、ついでの地上戦についても色々話してもらおうかねぇ
- ウメハラ
- 何が聞きたい?
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- 俺が思うに、地上戦って最初はネタなんじゃないかと思うんだ。必要最低限の知識にフェイントとか混ぜつつ相手を動かしていく、みたいな…
- ウメハラ
- いや、ネタってのは違うよ
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- うーん…、ネタっていう言い方は違うのかな。けど、「地上戦をやる」って言って最低限の知識を持たないでただ漠然とやろうとしている人が凄く多いように思うんだよね。材料が全部出揃って初めて駆け引きになるわけじゃん? 格ゲーに限らず言える事だけど、勝負事ってデジタルがあって始めてアナログが機能するというか…、そういう部分があるじゃん?
- ウメハラ
- 確かにデジタルは無視できないよ。でも格闘ゲー1つとってもデジタルを極めてる人間っていないと思うんだ。デジタルな面だけでもみんなもっと強くなれると思うね
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- で、そのデジタル面ってあんまりみんな口にはしないじゃん
- ウメハラ
- そうかなー? デジタルだけなら言えると思うけど。みんな面倒臭いんでしょ。見てりゃわかることだし
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- けどプレイを見てて明らかに理解してない部分とかわかるわけじゃん、さすがに。そういうのを言ってくれる人って少ないよね、この世界。まあみんな負けたくないから当たり前なんだけどさ
- ウメハラ
- そうかなー? 別に俺は格ゲーに関しては考えを隠したことないし、隠すつもりもないけどね。どこがわかってないのかがわからないんだよね
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- んじゃそれは、お前が教えるのが下手w!
- ウメハラ
- そうなのかw?
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- 俺は結構そういうの言っちゃうというか…、教えたくなっちゃうんだよね、分かる範囲で。そういうアドバイスってあんまりしない方がいいのかなぁ…、って考えることもあるんだよね
- ウメハラ
- その考えが理解できないんだよね、俺。みんなどこまで知りたいの?
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- うーん…、まあ質問の内容にもよるけど、連係できてない人間に連係の意味とかは言えるじゃん
- ウメハラ
- 聞かれたら言ってるつもりだけどなぁ…
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- んで、地上戦なわけですよ。ここでは主に足払い戦についての話ね
- ウメハラ
- 地上戦、地上戦って言うけど、これって格ゲーの中で1番単純な勝負だと思うんだ。相手が下がると思ったら踏み込んで、相手が技出すと思ったらスカすなり出際を潰すなりして相手を止める。ただの陣取りゲームなんだよね。けど逆に言うと、単純なだけに奥はすげぇ深い…、だから地上戦に負けて「それは何かを知らないからなんじゃないか?」って思うのは違う。それは単に実力不足。まあ玉がありかなしかでもちょっと違うからアレだけど…、足払い戦としても単純っていう本質に変わりはないよ
石器 vs 青銅器
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- けどさ、やっぱりいきなり足払い戦やれって言われても、何やっていいかわかんねーじゃん。相手が何考えてるかわかんないんだから。どこで何をすれば何が起きるかもわからない。んでうまい人を見たら、色々技振ったりしてるじゃん。本質はそこにはないんだろうけど、情報としてはフェイントとか使って勝ってるのかなぁ…、とか思うのは自然だと思うよ。いきなり本質的に下手って言われても、何が本質かも理解してないから、意味がわからないと思うんだよね。例えば、足払い戦を全く知らない人が2人いて、まっさらな状態からやり始めれば少しずつ文明を築いていくと思うんだ。でもいきなり青銅器持ってるヤツと、石しか使えないヤツがやってもどうしようもないと思うんだよね。だからせめて青銅の作り方を教えてやらないと戦いにならないと思うんだ
- ウメハラ
- ないよ。足払い戦の知識なんてもんはない。使う技も少ないし横の動きしかないし。読み以前の状態では経験くらいしかないよ、そこに知識はない。逆に言うと、カメラ屋さんが足払いにこだわるのはそこで、知識とかで左右されない駆け引きに魅力を感じてるんだよ
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- ほほう、ネタがないからこそってことか。んじゃ、カメラ屋さんはどんなフェイントにも動じないってこと? カメラ屋さんが本質で戦ってるとするならば、自分から動くってことをするのか? って思うんだけど…
そこは逆
- ウメハラ
- そこは逆でしょ。自分から動くよ。そうだな…、わかりやすく言うと、前にZERO3で俺が波動拳をモリモリ打つのに対して「それってリスクがあるんじゃないの?」って聞かれたことがあったんだ。「知ってるヤツに撃つのはわかるけど、知らないヤツに撃つのは危険じゃない?」ってね。んで俺は、「そんなことないよ」って答えた。俺はそこで波動を撃ち続けることによって、相手を判別するんだよね。簡単に言うと、上手い奴は簡単には飛んでこないし、何も考えてないヤツはすぐ飛んでくるじゃん。だから飛びからコンボ食らったとしても、そこで飛ぶようなヤツには負けないって感じなんだよね。そういう情報収集の必要経費。だからカメラ屋さんの足払い戦も一緒で、とりあえず自分からいって足払い食らっても、「じゃあ次からこうしよう」みたいな情報収集をしてる。最初からこれでいこうって決めて戦ってないんだよ。相手の動きを見て自分の動きを変化させていく感じなんだ。だから守り型のヤツには攻めるし、攻めて来るヤツはスカすだろうし、それってもう知識じゃないじゃん。なんつーか、本当に読み。もし限定状況において人読みで出す技がわかるっていうのを知識とするなら知識だけど…、さすがにそれは口では教えられない。それって直感的に頭で判断してることだからね。だから足払い戦はやるしかない。今でも現役のあの人の足払い戦は最強だと思うよ
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- へぇぇ、納得させられた。なるほどねぇ
- ウメハラ
- カメラ屋さんの大足は、のろいダッシュグランドストレートだったからね。間合いに入った瞬間に足が飛んでくるんだw だからもし足払い戦において練習したいんだったら、レバーを入れてから大足を押すまでの行動を限界まで早くすることじゃない? あの人の大足は早かったよ
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- 大足かw でも達人ほど基本に忠実ってのはすごく説得力があるね
二択論
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- 兄ケンの二択が凄いとは言うけどさ、言葉にするとどんな感じなの?
- ウメハラ
- うーん、難しいけど、とりあえず凄いと思うのは、状況に関係なく二択を仕掛けるところだね。相手にゲージがあろうがなかろうが、どんな状況でも二択だったから
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- てか、ちょっと不利な状況のときって、二択をかけれないんじゃなくて、利でかけないよね普通
- ウメハラ
- そうだね。けど無理やり仕掛けてあまりある結果を出すんだ、彼はw ってか、オレも結構二択が強いと思うんだけど、俺の考え的に無理な二択は仕掛けない方がいいと思ってるんだ。実際兄ケンにも調子の善し悪しはあるわけだしさ。人間相手に二択だけってのはちょっと厳しいと思う。だから俺は状況を選ぶというか…、ノッてきたらやりまくるけど、普段は無理はしないんだよね
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- それは意外とみんなそうかもね、ノリだせばって部分はある
自分のスタイル
- ウメハラ
- まぁそうなんだけど、それを二択にしてる人間ってのは少ないんだよね、実は。読み合いの質が大胆になっていくっていう点では一緒なんだけど…。兄ケンの凄いところはそのスタイルが二択から変わらないところw 俺はすでに自分のスタイルを持っているから、兄ケンの様にはなれないけど、あのスタイルで結果を出したってのはスゴイと思うよ
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- めずらしく誉めるねえ
- ウメハラ
- とまぁ…俺も俺なりに二択に対する考え方を持ってるんだよ
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- なるほどね。んじゃ、その考え方とやらを深く掘ってみようかねえ。とりあえず一般的な考え方とウメハラの考え方を比べて明らか違いを感じる部分ってある?
一般的
- ウメハラ
- 一般的っていうのがどういうものか聞いたことないからね。よくわからん。とりあえずアールはどんな感じ?
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- そうだな…俺は二択って意識するときはやるけど、大抵は試合の流れの中で投げてたり当ててたり、勢い任せみたいで…、終わってからあの行動は二択だったかな、とか思うことはあるね
- ウメハラ
- ふーん、そんな感じか。そうだな…、とりあえず俺は二択って色んな状況があって奥が深いなと思ってるんだけど、まず1つは圧倒的有利な二択。相手側のリスクとリターンを考えてとりあえず選択しておく行動だね。サードの春麗の画面端(※5)みたいな感じっていうとわかるかな。んでもう1つは、実力が近かったりキャラが似てたりすると、1試合で必ずくる勝負のポイントがあって、当然凄く怖いんだけど、そこではスゲー集中する二択がある。それが2つ目。で、もう3つ目は自分の優位を利用した、不合理な二択。この3つくらいかな
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- んじゃさ、素朴な俺の疑問を聞いてくれ。とりあえず相手をダウンさせるじゃん。そこに起き攻めでめくりで飛び込んで、まず投げるか投げないか。投げなかったとして小足を刻んで、また投げと打撃、さらにそこから飛んでめくり直すか、という状況で俺は行動のバランスが偏るというか…「もっとうまく出来るんじゃないかな」っていつも思うんだよね

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(※5/サードの春麗の画面端)
強力な単発ヒット確認からのコンボがあるため、投げをある程度食らうのはしょうがないという状況。
画面外の情報
- ウメハラ
- そういうのって、多分ほとんどの人が二択で悩んでる部分だと思うよ。そもそも強い奴が二択で強いっていうのは、常にアドバンテージがある状態で二択をやってるからという前提があるんだよね。だから二択において状況別に考える必要があると思ってるんだ。じゃあ調子に乗れてないときや相手にアドバンテージがある状況でどうするか。例えば俺は雰囲気を見る。相手は誰であるかとか、プレイ中に話しながらやっているから我慢はあんまりしてこないんじゃないかとか、画面外の情報も全部利用するよ
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- じゃあ、強い人間ってのはそういったこともすごく貪欲にやってるってことなのか!
- ウメハラ
- うん、けどそういうのってもう…、自然にできちゃうんだ、経験で。だから俺は勝負はまだだなっていうときは意外と表の選択をする時もあるね。んで、調子に乗ってきたと感じたらもうやりたい放題w って感じかな
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- 二択の部分って凄くおぼろげだから嫌ったりする人もいるけど、強い奴に限ってしっかりやってくるんだよね。この話を参考に俺自身も精進せんとなぁ…
- ウメハラ
- まあ精進してくれ